日刊スポーツより https://www.nikkansports.com/
水球日本の新戦術は「ゴール前いらっしゃい」守備
[2017年7月2日9時54分 紙面から]
水球男子日本代表「ポセイドンジャパン」が、また常識外れの新戦術で世界を驚かせる。昨年のリオ五輪で披露した相手選手の前で守る「パスラインディフェンス」に続き、相手をゴールから遠ざけるという球技の常識を覆し、逆に危険地域に誘う「超々攻撃型ディフェンス」を導入。チームは今日2日に世界選手権(17日開幕、ブダペスト)の直前合宿地スペインへ出発する。
耳を疑うような言葉で、大本監督は日本の新守備戦術を説明した。「相手をゴール前に入れるんです」。サッカーやラグビーに限らず、球技では「相手を自陣ゴールから遠ざける」のが常識。しかし、あえて「インサイドを空ける」守備を採用。「パスライン-」で世界を驚かせた日本が、再び世界をあっと言わせる。
ゴールを守ることに固執せず、あえてパスコース封じを目指した「パスライン-」は成功した。常識を覆す戦術、それを支える運動量とスピードに世界が驚いた。国際水連(FINA)や各国コーチ陣からは「水球の革命」「未来の水球」と称賛された。しかし、リオ五輪は5戦全敗。肉薄したものの、勝てなかった。
これまでの守備戦術を進化させたのが、今回の世界初のシステム。「水球は、実は外からフリーで打った方が得点率が高い。インサイドからの方が意外と得点にならない」と大本監督。あえてゴール前にパスを通させ、そこをたたく。「パスラインだけでなく、2つ持つことが大きい」。相手が前のめりになれば逆に守備は手薄となり、日本の武器である速攻も決まる。
失点のリスクは高くなるが、志水主将は「世界に勝つためには、多少のリスクは覚悟しないと」。32年ぶりに出場した五輪で日本の現在地は分かった。厳しい現実も突きつけられた。目標とする20年東京五輪でのメダル獲得のため、まずは世界選手権で決勝トーナメント進出が目標。「楽しみです」と志水。新戦術を手に、日本が世界に挑む。【荻島弘一】
◆水球世界選手権 14日開幕の世界水泳選手権(ブダペスト)の中で行われる。16カ国が4組に分かれて1次リーグを行い、各組3位までが決勝トーナメント進出。A組2位-B組3位のように1回戦を行い、勝者が他組1位と準々決勝を争う。大会は17回目で最多優勝は男子がセルビア(ユーゴスラビア含む)の5回、女子はオランダの8回。出場7回目の日本男子はD組でロシア、米国、クロアチアと対戦し、4回目の女子はC組でハンガリー、オランダ、フランスと当たる。